増税は、政府が社会保障の充実や公共サービスの維持・向上、財政赤字の削減などの目的で税率を引き上げる政策です。そのメリットとして、財源の安定確保により医療や年金などのサービスが充実し、経済安定が図られる点が挙げられます。しかし一方で、増税は消費意欲の低下や生活水準の低下を招き、経済活動にマイナスの影響を及ぼすリスクもあります。したがって、増税にはバランスを考慮した政策判断が必要とされます。
本記事では、増税のメリット・デメリットについて解説します。
- 増税とは
- 増税のメリット
- 増税のデメリット
- 増税はいつから?
- なぜ増税するの?その理由
- 増税の一覧
- 1989年4月:消費税3%の導入
- 1997年4月:消費税率を3%から5%に引き上げ
- 2013年1月:所得税の最高税率を40%から45%に引き上げ(高所得者向け)
- 2014年4月:消費税率を5%から8%に引き上げ
- 2015年1月:相続税の基礎控除額引き下げと税率構造の見直し
- 2016年度以降:法人実効税率の段階的引き下げ(約35%から29.74%へ)
- 2018年1月:森林環境税(環境譲与税)の導入を決定(2024年度から課税開始予定)
- 2019年10月:消費税率を8%から10%に引き上げ
- 2019年10月:酒税の段階的な増税開始
- 2019年10月:たばこ税の段階的な増税開始
- 2019年10月:大企業向けの研究開発税制の見直し
- 2020年4月:自動車税の環境性能割の導入
増税とは
増税とは、政府が税金の税率や課税範囲を引き上げることによって、国や地方自治体の財政状況を改善するための政策の一つです。
増税には所得税、消費税、法人税など様々な種類があり、それぞれの税率が引き上げられたり、新たに課税対象が広がったりすることで、私たちが支払う税金の額が増加します。
増税が行われる理由としては、例えば社会保障の充実やインフラ整備、教育の拡充など公共サービスの向上や、国家の財政赤字の解消が挙げられます。
しかし、増税によって個人や企業に負担が増すことから、経済活動への影響や国民生活への圧迫も懸念されるため、政府はその影響を考慮して慎重に増税を実施する必要があります。
また、増税に対しては、政府の支出削減や財政改革といった代替手段を求める意見もあり、国民からの理解と信頼を得るためには透明性のある財政運営が求められます。


増税のメリット
増税は、国民の多くにとって負担が増えるため、ネガティブなイメージが強いですが、国や社会全体で見ると、必ずしも悪いことばかりではありません。
増税のメリットとしてここでは…
- 財政健全化
- 社会保障の充実
- 公共サービスの向上
- 経済政策の選択肢拡大
- 国債発行の抑制
- インフレ抑制効果
- 国際的な信用力の向上
- 特定の政策目標の達成
- 所得再分配機能の強化
- 経済構造の改革促進
…について解説します。
財政健全化
増税によって、政府の収入が増加し、国家や地方の財政赤字を削減することが可能です。財政が健全化されると、長期的な経済の安定が期待され、急激な景気変動への対応力も強化されます。特に、国の債務が減少することで財政状況が安定し、対外的な信用が高まります。また、財政の余裕が増すことによって、将来的な社会課題に柔軟に対応できる基盤が整います。結果として、国民への負担が抑えられるとともに、安定した社会構築への一歩となります。
社会保障の充実
増税による追加収入は、医療、年金、介護などの社会保障サービスの充実に活用できます。特に高齢化社会が進行する中で、これらの財源が確保されることは、持続的な社会保障制度の維持にとって重要です。医療や介護サービスが安定して提供されることにより、国民全体が安心して生活できる社会が実現します。また、年金制度の安定化にも寄与し、老後の不安を軽減することが期待されます。このように、増税は将来的な国民の福祉を支える財源となります。
公共サービスの向上
増税で得られた資金は、教育やインフラ整備、防災対策などの公共サービスの充実に活用されます。これにより、公共インフラの維持や改善が可能となり、国民生活の質の向上が期待されます。教育環境の整備は次世代の育成に貢献し、インフラ整備や防災対策は安全な社会づくりに欠かせない要素です。また、地方自治体も増税による資金を活用して、地域に根ざした公共サービスを提供できるため、地域活性化の面でも有益です。結果的に、国全体の生活環境が改善されるといえます。
経済政策の選択肢拡大
増税により政府の財政基盤が強化されることで、景気対策や産業育成など、多様な経済政策を実施する選択肢が広がります。これにより、経済の安定化や成長を図るための政策を柔軟に導入できるようになり、社会の変化や経済情勢に適応しやすくなります。また、政府が経済政策を迅速に展開する余力が高まるため、突発的な経済危機への対応も円滑になります。このように、経済政策の幅が広がることは、国全体の経済の強靭性向上にもつながります。
国債発行の抑制
増税によって税収が増加すると、新たに国債を発行する必要性が抑えられます。国債発行を控えることで、将来の返済負担が軽減され、次世代に過度な債務を引き継がない持続可能な財政運営が可能になります。国債の依存が減少することで、国家財政の安定が強化され、対外的な信用度も向上します。また、国債発行が抑制されることで利息支払いが減少し、他の公共サービスや社会保障へ回せる財源が増えるといったメリットもあります。
インフレ抑制効果
消費税の増税は、短期的には消費活動を抑えるため、インフレ抑制効果が期待されます。特に、経済が過熱して物価が上昇し続ける場合において、増税は消費を落ち着かせ、インフレの過剰な進行を防ぐ役割を果たします。インフレが抑制されると、物価の安定によって国民生活の負担が軽減されます。また、適度なインフレ抑制によって、将来的な経済の安定と成長のための健全な価格環境が維持されやすくなります。こうして、インフレと経済成長のバランスを保つ効果も期待されます。
国際的な信用力の向上
財政健全化への取り組みは、国際的な信用力の向上に寄与します。特に、債務を減らし、財政収支を安定させることで、外国投資家からの信頼が向上し、国際的な投資環境が整備されます。信用力が高まると、海外からの資金調達がしやすくなり、対外的な経済関係の安定も期待できます。また、信用力が向上することで、外国からの投資促進や貿易拡大といった経済の活性化も図れるため、国内の成長にも寄与します。
特定の政策目標の達成
環境税や炭素税など、特定の目的で設けられた増税は、政策目標の達成にも貢献します。環境税であれば、温室効果ガスの排出削減が促され、持続可能な社会実現に向けた取り組みが進展します。さらに、特定の税収がその政策に再投資されることで、社会や環境に配慮した経済活動が促進されます。こうした増税は、単なる財源確保だけでなく、社会の価値観や方向性を反映した効果的な政策手段としても機能します。
所得再分配機能の強化
累進課税の強化や資産税の導入は、所得格差の是正に寄与し、社会の公平性を高めます。増税による所得再分配機能が強化されることで、低所得者層への支援や福祉の充実が可能となり、社会の安定が図られます。また、経済的不平等の解消により、全体的な消費力が向上し、経済が活性化する可能性もあります。このように、所得再分配を通じて、社会全体の生活水準向上や社会の連帯感強化が期待されます。
経済構造の改革促進
増税が企業の生産性向上や効率化を促すこともあります。特に、企業が効率的な経営を目指すことで、持続的な成長や新しいビジネスモデルの創出が可能となります。また、産業構造が多様化し、経済全体の活力が高まると、より競争力のある経済が形成されます。増税は単に税収を増やすだけでなく、企業や産業が適応力を高めるきっかけにもなり、結果として経済全体の成長を促進する役割を果たすといえます。


増税のデメリット
増税は、国や社会の財政状況を改善するために必要な場合もありますが、国民生活や経済活動に様々な影響を与えるため、慎重な議論が求められます。
ここでは…
- 消費意欲の低下
- 生活水準の低下
- 貯蓄の減少
- 景気の悪化
- デフレの誘発
- 中小企業への打撃
- 投資の減少
- 海外への生産移転
- 税制の複雑化
…について解説します。
消費意欲の低下
増税によって税金の負担が増えると、個人の手取り収入が減少し、消費意欲が低下する傾向があります。消費意欲の低下は特に日常的な買い物や娯楽支出に影響し、経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります。消費の落ち込みが続くと、小売業やサービス業を中心に売り上げが減少し、企業の業績にも影響が出ます。また、消費が低迷することで経済全体が停滞し、景気回復の遅れにつながることもあります。このように、増税による消費意欲の低下は経済全体の循環に影響を与える重大なデメリットです。
生活水準の低下
増税による負担は特に低所得層にとって相対的に大きく、生活水準の低下につながる可能性があります。所得が低い世帯にとって増税による負担が増えると、日常生活で必要な支出が削られ、生活に困窮するケースが増えるかもしれません。特に消費税などの増税は、すべての国民が支払うため、生活費への影響が直接的です。生活水準の低下は、社会全体の福祉や安定にも影響を与え、格差の拡大や不安定な生活基盤の増加にもつながりかねません。このように、生活への負担増は増税のデメリットとして無視できない要素です。
貯蓄の減少
増税により手取り収入が減ると、消費だけでなく、将来への備えとなる貯蓄にも悪影響が出る可能性があります。生活費が増える中で貯蓄が減ると、老後資金や教育資金など、長期的な計画が立てにくくなり、不安が増す要因にもなります。特に低所得層や若年層にとって、貯蓄減少は生活の不安定化につながり、将来のリスクに備えることが難しくなります。貯蓄率の低下は経済全体にも影響を与え、家計の安定が欠如することで、消費や投資の減少が進む可能性があります。結果として、増税は家計全体の健全な資産管理を難しくするデメリットが生じます。
景気の悪化
増税が行われると、消費が減少し、企業の売り上げにも影響が出るため、経済全体の景気が悪化する可能性があります。消費の落ち込みは、特に小売業やサービス業に深刻な影響を与え、さらに企業の投資意欲も低下させる傾向があります。景気の悪化が進むと、企業はコスト削減のため雇用を減らす場合があり、失業率の上昇が懸念されます。また、消費・投資の減少によって経済全体の成長が鈍化し、デフレのリスクが増大する可能性もあります。このように、増税は一時的に財政を安定させても、景気に悪影響を与える可能性があります。
デフレの誘発
消費の冷え込みが進むと、企業は価格を引き下げて販売を促進しようとするため、デフレが引き起こされる可能性があります。デフレは、企業の収益悪化や賃金の低下を招き、さらに消費が減少するという悪循環を生み出します。デフレが長期化すると経済全体が停滞し、消費者や企業の経済活動が一層低迷することが懸念されます。また、デフレの進行により、物価が下がっても収入が減少するため、国民の購買力も低下し、生活水準がさらに落ち込むリスクがあります。増税がデフレを誘発するリスクは、経済政策において重要な考慮点です。
中小企業への打撃
増税による消費の低迷やコスト上昇は、特に財務基盤の弱い中小企業にとって大きな打撃となりえます。消費の減少によって売り上げが低迷すると、資金繰りが悪化し、倒産リスクが高まる可能性があります。また、中小企業が税負担をカバーするために価格を引き上げると、競争力が低下し、消費者離れにつながる恐れもあります。特に地方経済においては、中小企業の存在が地域経済の重要な支えとなっているため、増税が地域経済全体に与える影響は大きいです。こうして、中小企業が増税の影響を大きく受けることで、経済の安定性が損なわれることが懸念されます。
投資の減少
増税によって企業の収益が減少すると、新たな設備投資や成長戦略への投資が控えられる傾向があります。投資が減少すると、企業の成長機会が制約され、技術革新や生産性向上も鈍化する可能性があります。特に産業全体で投資が減少すると、経済の活力が失われ、成長率が低下するリスクが高まります。また、投資の停滞が続くと、国内の雇用機会も減少し、労働市場にも悪影響が及ぶ可能性があります。投資の減少は、経済全体の成長と競争力の低下に直結するデメリットです。
海外への生産移転
増税によって国内の税負担が増すと、一部の企業は税金の軽い国へ生産拠点を移転し、国内の雇用が減少する可能性があります。企業が生産拠点を海外へ移すと、国内の生産活動が縮小し、特に製造業を中心とした地域の経済に大きな影響が及びます。生産移転が進むと、国内市場での供給力が弱まり、輸入依存が高まる恐れもあります。また、海外への生産移転は、国内での技術蓄積や雇用機会の減少をもたらし、経済基盤の弱体化にもつながります。このように、増税が企業の海外移転を促すことで、経済全体の持続可能性が損なわれるリスクが生じます。
税制の複雑化
増税や税制改革が進むと、新たな課税ルールが導入され、税制が複雑化し、納税者の理解や負担が増える可能性があります。税制が複雑になると、個人や企業は税務処理に多くの時間と労力を要し、税務に関する専門家のサポートが必要になるケースも増えます。複雑化する税制は、特に中小企業や個人事業主にとって経済的な負担となり、コスト増につながることも考えられます。また、税務の手続きが煩雑になることで、申告漏れや手続きミスが増加するリスクもあり、結果として納税者と税務当局双方にとって負担が増加するデメリットがあります。


増税はいつから?
増税の時期は、政府の政策決定や経済状況によって変動するため、一概に特定の日付を示すことは難しいです。
しかし、最近の日本における主要な増税に関する情報として…
- 増税の検討過程
- 増税後の経済見通し
- 政治的議論
- 地方財政への影響
…という観点から解説します。
増税の検討過程
増税の実施には慎重な検討が必要で、経済状況や国民生活への影響を総合的に考慮する必要があります。増税の時期や内容に関しては、過去の事例として野田佳彦元首相が経済状況に応じて柔軟な姿勢を示したことがあり、慎重な対応が重要視されてきました。増税の実施を決める際には、経済指標の確認や専門家による意見収集など、多方面からの情報収集が行われます。特に、増税が消費者の購買行動や企業活動に与える短期・長期的影響については、政府としても予測が求められます。結果的に、増税の検討過程は、国民経済全体にかかわる重要な政策決定となります。
増税後の経済見通し
増税後の経済動向を見極めることは、増税の影響を評価し、今後の政策を立案するために必要不可欠です。2020年には、消費税増税後の経済見通しが注目され、増税が景気に与える影響が議論されました。増税後の消費の冷え込みや景気の悪化を防ぐため、政府は経済対策を講じることが多く、これにより増税の影響を緩和しようとします。増税後に見られる消費者行動の変化や投資意欲の低下といった経済指標の変動は、将来的な増税計画にも影響を与えます。増税の実施後には、経済の安定と成長を確保するための追加政策の導入が重要になります。
政治的議論
増税に関しては、経済政策や財政健全化の観点からさまざまな政治的議論が展開されています。例えば、一部の政党は消費税増税を中止し、代わりに国民の仕事や所得を増やす政策を提案するなど、増税の賛否をめぐって異なる立場があります。増税は、国民生活に直結するため、政治家の間でも支持層の意向や経済の状況を反映した議論がなされます。特に、増税によって生活の質が低下することを懸念する意見もあり、国民の負担と財政健全化とのバランスを求める声も多いです。こうして、増税に関する政治的議論は、国の方向性や社会の価値観を反映する重要な場となります。
地方財政への影響
増税は、中央政府のみならず、地方自治体の財政にも大きな影響を与える要因となります。地方自治体は、増税によって得られる税収を公共サービスやインフラ整備に充てることが可能になる一方、増税による地域経済への影響も慎重に見極める必要があります。特に、地域ごとに異なる経済状況や高齢化問題に応じた対応が求められるため、増税の影響を考慮した地方財政運営が必要です。また、連携中枢都市圏などの取り組みを通じて、地方経済の活性化を図る動きもあり、増税が地方の経済政策と密接に関連していることがうかがえます。地方財政への増税の影響は、地域住民の生活水準や社会の安定に大きくかかわるため、政府間での協力体制も求められます。


なぜ増税するの?その理由
増税は、国や地方自治体にとって、避けられない選択肢となることがあります。その理由は様々ですが、主なものとして…
- 財政赤字の解消
- 社会保障費の増大
- 公共サービスの拡充
- 経済状況の変化
…があげられます。
それぞれ解説します。
財政赤字の解消
国や地方自治体の財政が赤字となり、支出が収入を上回る場合、増税によって赤字を解消することが目的の一つとなります。これまで国債などの借金で賄われてきた財源を税収で賄うことで、将来の返済負担を軽減し、次世代への財政負担を抑えることが期待されます。財政赤字が継続すると、借金の利払いが増え、他の公共サービスや社会保障への支出が制約される恐れがあります。また、国家の財政健全性が損なわれると、国際的な信用度が低下し、資金調達のコストが上昇するリスクもあります。したがって、増税による財政赤字の解消は、持続可能な財政運営のために重要な役割を果たします。
社会保障費の増大
日本では高齢化が進行しており、医療費や年金といった社会保障費が大幅に増加しています。これらの増大する費用を安定的に賄うためには、持続可能な税収の確保が不可欠です。特に、医療や介護サービスの充実は国民の生活に直接影響を与えるため、社会保障の安定を図る上でも重要です。税収を社会保障費に充てることで、高齢者だけでなく、全世代に対する福祉の充実が実現され、国民全体が安心して暮らせる社会が構築されます。増税は、このような社会保障の財源としての役割を担い、社会全体の福祉と安定を維持するための手段として機能します。
公共サービスの拡充
増税による追加の財源は、道路や教育、環境保護といった公共サービスの充実に使われます。これらの公共サービスは、国民の生活を支えるために不可欠な要素であり、インフラの整備や教育環境の向上など、国民生活の質を向上させるために重要です。さらに、少子高齢化や気候変動といった新たな社会課題にも対応するためには、新たな財源が求められる状況にあります。増税は、こうした公共サービスを維持・拡充し、将来に向けた課題に柔軟に対応するための基盤を整えるための手段となります。結果として、増税による公共サービスの充実は、国全体の持続的発展にも寄与します。
経済状況の変化
経済は景気変動や国際的な経済状況の変化に左右されるため、税収が安定しない時期もあります。特に、景気の低迷や税収の減少に対処するためには、税率の引き上げや新たな税種の導入が検討されることがあります。経済の変化に対応した税制の見直しは、政府が財政運営を安定させ、持続可能な成長を図るための手段です。さらに、税制の柔軟な運用は、不測の事態に対する財政的な備えを強化するためにも有効です。このように、増税は変動する経済状況に適応し、安定的な財源を確保するための手段として位置づけられます。


増税の一覧
日本における主な増税の一覧を時系列で紹介します。これらの増税は、その時々の経済状況や政策目標に応じて実施されてきました。
- 1989年4月:消費税3%の導入
- 1997年4月:消費税率を3%から5%に引き上げ
- 2013年1月:所得税の最高税率を40%から45%に引き上げ(高所得者向け)
- 2014年4月:消費税率を5%から8%に引き上げ
- 2015年1月:相続税の基礎控除額引き下げと税率構造の見直し
- 2016年度以降:法人実効税率の段階的引き下げ(約35%から29.74%へ)
- 2018年1月:森林環境税(環境譲与税)の導入を決定(2024年度から課税開始予定)
- 2019年10月:消費税率を8%から10%に引き上げ
- 2019年10月:酒税の段階的な増税開始
- 2019年10月:たばこ税の段階的な増税開始
- 2019年10月:大企業向けの研究開発税制の見直し
- 2020年4月:自動車税の環境性能割の導入
1989年4月:消費税3%の導入
1989年4月、日本では初めて消費税が導入され、税率は3%と設定されました。消費税は、所得税や法人税に比べて税収が安定しやすいとされ、福祉や公共サービスの財源として期待されました。当時の竹下登内閣によって導入が決定され、国民生活全般に影響を与える税制改革として大きな注目を集めました。消費税は、取引のすべてに課税される「間接税」であり、所得層に関係なく同じ割合で課税されるため、低所得層への影響が特に懸念されました。この導入により、日本の税制は大きな転換点を迎え、社会保障や公共サービスのための安定した財源確保の基盤が築かれました。
1997年4月:消費税率を3%から5%に引き上げ
1997年4月、消費税率が3%から5%に引き上げられ、国民生活に再び大きな影響を与えました。橋本龍太郎内閣が財政健全化を目的に実施し、増税分は福祉や医療、年金など社会保障費の財源に充てられるとされました。この増税は、日本の消費動向に影響を及ぼし、消費の低迷や景気の悪化も懸念されました。消費税の引き上げは、税収確保に貢献した一方で、経済成長への影響も課題として残りました。この引き上げは、日本の財政再建と社会保障制度の安定化を目指したものであり、税率見直しの先駆けとなるものでした。
2013年1月:所得税の最高税率を40%から45%に引き上げ(高所得者向け)
2013年1月から、所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられ、高所得者層に対する負担が増大しました。これは、民主党政権下で決定され、社会保障の充実と財政健全化のための財源確保が目的とされました。この措置により、高額所得者からの税収が増加し、所得格差の是正も意図されましたが、一部では税負担の増加が経済活動への影響を与えるとの懸念もありました。所得税の累進課税が強化されたことで、財政面での安定化に寄与した一方で、富裕層への影響が議論の的となりました。結果として、この引き上げは、税制の公平性を追求するための重要な施策として位置づけられました。
2014年4月:消費税率を5%から8%に引き上げ
2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられ、日本経済に再度大きな影響を及ぼしました。これは安倍晋三内閣が行ったもので、増大する社会保障費に対応するための財源確保が主な目的でした。この増税により、国民の消費行動が変化し、経済活動にも少なからぬ影響が見られました。消費税増税は特に低所得者層に重くのしかかり、政府は軽減税率制度や給付金の支給などの対策を講じました。この引き上げは、財源確保のための施策であり、社会保障制度の持続可能性を高めるための重要な取り組みとされました。
2015年1月:相続税の基礎控除額引き下げと税率構造の見直し
2015年1月には相続税の基礎控除額が引き下げられ、より多くの人が相続税の対象となるように改正が行われました。これにより、相続税の負担が増し、財産の多い世帯が影響を受けることになりました。加えて、相続税の税率構造も見直され、最高税率が55%に引き上げられ、富裕層への課税が強化されました。この改正は、相続税を通じた所得再分配を促進し、格差是正を図る目的も含まれていました。相続税制度の見直しは、日本社会における資産の分配と公平性を確保するための重要な施策となりました。
2016年度以降:法人実効税率の段階的引き下げ(約35%から29.74%へ)
2016年度から、日本の法人実効税率が段階的に引き下げられ、約35%から29.74%へと調整されました。この引き下げは、日本の企業が国際競争力を維持するために必要とされており、企業活動の活性化が期待されました。法人税の引き下げにより、国内企業の投資意欲が高まり、経済成長の促進にもつながるとされました。また、税率引き下げは海外企業の日本進出を促進し、国内雇用の創出にも寄与しました。このように、法人実効税率の見直しは、経済活性化と競争力向上を目的とした政策の一環として実施されました。
2018年1月:森林環境税(環境譲与税)の導入を決定(2024年度から課税開始予定)
2018年1月、森林環境税(環境譲与税)の導入が決定され、2024年度からの課税開始が予定されました。森林環境税は、森林保全や地域の環境保護を目的とした税制であり、各自治体に財源を分配する仕組みが採用されています。気候変動対策の一環としても注目されており、持続可能な環境づくりへの貢献が期待されています。森林環境税は、地域の森林整備や自然保護に使われ、環境保護への意識を高める効果も狙われています。環境保全のための新たな財源確保として、森林環境税は重要な役割を担うものとされています。
2019年10月:消費税率を8%から10%に引き上げ
2019年10月に消費税が8%から10%に引き上げられ、消費税の二桁化が実現しました。政府は、増大する社会保障費の財源確保と財政健全化を目的にこの引き上げを行いました。この際、軽減税率が導入され、食品や新聞など生活必需品には8%の税率が適用され、生活への影響を抑えようとする措置も取られました。この増税は消費者の購買意欲に影響を与え、経済成長への影響も一部で懸念されました。消費税率10%への引き上げは、安定的な社会保障の維持に不可欠な財源確保として、政府にとって重要な施策となりました。
2019年10月:酒税の段階的な増税開始
2019年10月から酒税の段階的な増税が開始され、酒類の種類によって異なる税率が段階的に引き上げられました。ビールや発泡酒といった酒類の税率調整は、酒税の一体化を目指すもので、酒類間の公平性を図るための見直しとされました。増税により、酒税収入が増えるとともに、適正な飲酒を促進する目的も含まれました。消費者の飲酒行動に影響を与えることが予測され、一部では消費量が減少する可能性も指摘されています。酒税の段階的増税は、税制の公平性を高めるとともに、飲酒に関する社会的課題に対応する手段として導入されました。
2019年10月:たばこ税の段階的な増税開始
同じく2019年10月にたばこ税の段階的な増税が開始され、健康被害を減らすための抑制策としても注目されました。たばこ税の増税は、健康増進を目的とし、たばこの消費量を減少させることで医療費削減にも寄与すると考えられました。段階的に税率が引き上げられることで、喫煙者の負担が増し、禁煙を促す効果も期待されています。また、たばこ税収は医療や健康促進のための施策に使われるため、公共の健康改善に直接貢献するものとされています。たばこ税の増税は、健康政策の一環として国民生活にも影響を与える重要な施策となりました。
2019年10月:大企業向けの研究開発税制の見直し
2019年10月、大企業向けの研究開発税制が見直され、研究開発投資へのインセンティブが調整されました。新しい制度は、企業の研究開発活動をさらに促進し、国内産業の競争力向上を支援する目的がありました。企業の技術革新や新製品の開発が進むことで、経済全体の成長が期待されました。税制の見直しにより、研究開発費の効率的な利用が促され、企業の戦略的な投資も強化されました。研究開発税制の見直しは、日本の産業構造強化と経済成長のための重要な政策として実施されました。
2020年4月:自動車税の環境性能割の導入
2020年4月には、自動車税の環境性能割が導入され、環境負荷の低い車両への優遇措置が始まりました。この制度は、車両の環境性能に応じて税率を変えるもので、温室効果ガス削減やエコカー普及を目的としています。環境性能の高い車両を購入するインセンティブが増し、消費者の環境意識も高まることが期待されています。また、温暖化対策の一環として、エコカーの導入を促進することで、交通分野の環境負荷軽減にも貢献しています。自動車税の環境性能割は、持続可能な社会実現に向けた重要な税制改正と位置づけられています。

