スーパーマーケットの24時間営業は、消費者の利便性向上や競争力強化といったメリットがある一方で、人件費や光熱費の増加、従業員の健康への影響など、多くのデメリットも抱えています。
本記事では、スーパーマーケット24時間営業の利点・欠点について解説します。
スーパーマーケット24時間営業のメリット
スーパーマーケットの24時間営業には、いくつかの重要なメリットがあります。
ここでは…
- 消費者ニーズへの対応
- 効果と効率の向上
- 競争力の強化
- 新たな顧客層の獲得
- 売上の増加
…について解説します。
消費者ニーズへの対応
24時間営業のスーパーマーケットは、現代社会の多様化するライフスタイルに合わせた利便性を提供することで、消費者ニーズに応えています。特に都市部では、仕事の時間帯や生活パターンが人によって異なるため、夜遅くでも必要なものを購入できる環境が重要です。例えば、「フーデックス」六本木店のような都心型小型店舗では、忙しい生活を送る消費者の即時性の高い買い物需要を満たしています。また、24時間営業による「いつでも買える」という安心感は、特に家族の介護や育児で昼間に買い物が難しい人々にとっても有益です。さらに、急な予定変更や忘れ物にも柔軟に対応できることから、都市生活者にとって欠かせない存在となっています。このような消費者中心の営業形態は、顧客満足度を高めるだけでなく、生活インフラとしてのスーパーマーケットの価値をさらに高める結果を生みます。
効果と効率の向上
24時間営業を行うことで、店舗運営の業務効率が向上し、結果的にサービス全体の品質向上が期待できます。東武ストア鎌ケ谷店の例では、3年間にわたる業務改革を経て、営業時間の延長がスムーズに実現しました。このプロセスでは、業務分担の見直しや在庫管理の最適化が進められ、効率性が飛躍的に向上しました。また、夜間の時間を活用して商品の補充や清掃、メンテナンスを行うことで、昼間の混雑時に生じる業務負荷が軽減される利点もあります。こうした効率的なオペレーションは、スタッフの負担を分散させるだけでなく、店舗全体の運営コスト削減にも寄与します。この結果、顧客にはよりスムーズでストレスの少ないショッピング体験が提供され、店舗の競争力向上にもつながります。
競争力の強化
24時間営業は、競争が激しい食品小売業界で他店との差別化を図るための重要な戦略の一つです。例えば、マルエツのような企業が都心型小型スーパーマーケットで24時間営業を採用することで、利用可能な時間帯の選択肢を増やし、顧客の利用頻度を高めています。この戦略は、特に深夜や早朝に開店していない他店との差別化要因となり、競争優位性を築く上で大きな効果を発揮します。また、24時間営業の導入は「便利な店」としてのブランドイメージの確立にも寄与します。消費者が「どんなときでも頼れる店」と認識することで、リピーターの増加や口コミ効果を通じた新規顧客の獲得が期待できます。競争が激化する市場環境下で、他社より一歩先んじた営業形態を提供することは、企業全体の成長にもつながる重要な施策です。
新たな顧客層の獲得
24時間営業を通じて、通常の営業時間ではアプローチしづらい新たな顧客層にリーチすることが可能です。特に夜勤で働く医療従事者や工場労働者、早朝に出勤する社会人、夜間の学業に従事する学生など、深夜や早朝に買い物を必要とする層が対象です。これに加えて、災害時や急な家庭の事情で深夜に物資を調達する必要がある顧客にとっても、24時間営業は心強い存在となります。こうした新しい顧客層に対応することで、地域社会におけるスーパーマーケットの存在感が高まると同時に、従来のターゲット層以外のニーズを取り込むチャンスが広がります。さらに、これらの顧客層は他の時間帯の利用客とは異なる購買傾向を持つため、マーケティングや商品配置において新たな可能性を生み出すきっかけともなります。
売上の増加
営業時間を24時間に延長することで、潜在的な売上機会を取り込むことが可能となり、全体的な売上の向上が期待されます。通常の営業時間内に買い物ができない顧客が深夜や早朝に来店することで、追加の収益が生まれるだけでなく、客単価の向上にもつながるケースがあります。また、夜間や早朝に限ったプロモーションや限定商品を展開することで、特定の時間帯における来客数をさらに増やす施策も考えられます。加えて、営業時間の延長に伴うスタッフのシフト制導入により、顧客対応の質が向上することも売上増加に寄与する要因です。このように、24時間営業を通じて得られる売上向上効果は、単なる利便性の提供にとどまらず、企業全体の収益構造を強化する基盤となります。


スーパーマーケット24時間営業のデメリット
スーパーマーケットの24時間営業は、顧客の利便性向上に繋がる一方で、様々なデメリットも伴います。
ここでは…
- 人件費の増加
- 従業員の健康と労働環境への影響
- 光熱費の増加
- 防犯対策の強化
- 商品管理の複雑化
- 深夜の客数減少
- 地域社会への影響
- 従業員の確保困難
- 競合との過度な競争
- 食品ロスの増加
…について解説します。
人件費の増加
24時間営業を行うためには、深夜帯にも従業員を配置する必要があり、人件費が大幅に増加します。特に、深夜手当などの割増賃金が発生することで、昼間の営業に比べてコストが高くなります。また、雇用する従業員の数が増えると、教育や研修にかかるコストも増加します。加えて、深夜帯の勤務を担う人材は限られているため、求人の際に高めの賃金設定が求められる場合があります。このように、24時間営業は利益を生む一方で、人的資源に関するコスト負担を増やす要因となります。
従業員の健康と労働環境への影響
深夜勤務は従業員の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。不規則な睡眠サイクルや長時間労働によるストレスが、身体的・精神的な負担を増大させます。また、従業員が仕事とプライベートのバランスを取りにくくなることで、ワークライフバランスの維持が難しくなります。これにより、離職率が高まるだけでなく、従業員満足度の低下につながる可能性もあります。さらに、健康問題や労働環境の悪化は、企業イメージにも影響を与えるリスクがあります。
光熱費の増加
24時間営業を行うためには、店舗を常に稼働させる必要があり、電気代や冷暖房費などの光熱費が増加します。特に夜間の照明や冷蔵設備の稼働により、昼間の営業だけの場合に比べてエネルギーコストが高くなる傾向があります。また、深夜帯の少ない客数に対しても固定費としてこれらのコストが発生するため、効率性が低下します。さらに、省エネ対策を行わない場合、長期的には店舗運営における環境負荷が増大する可能性も懸念されます。このように、光熱費の増加は収益構造に直接的な影響を与えます。
防犯対策の強化
深夜帯の営業では、通常の営業時間以上に防犯対策が重要になります。特に、深夜は犯罪リスクが高まるため、警備員の配置や防犯カメラの増設など、追加のセキュリティコストが発生します。また、従業員の安全を確保するための研修やシステムの導入も必要です。これに加えて、万が一のトラブルに備えた保険加入などの費用も考慮する必要があります。防犯対策を怠ると、店舗や従業員が危険にさらされるだけでなく、顧客の信頼を失う結果にもなりかねません。
商品管理の複雑化
24時間営業では、在庫管理や商品補充のタイミングが複雑になり、効率的な運営が難しくなる場合があります。深夜帯の少人数体制では、商品の補充や陳列が遅れるリスクが高まります。また、需要が読みにくい時間帯では、売れ筋商品を切らさないようにするための調整が難しくなります。この結果、在庫過多や欠品のリスクが増大し、売上や顧客満足度に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、夜間の補充作業中に商品の破損や管理ミスが発生することも考えられます。
深夜の客数減少
深夜帯の来店客数は昼間に比べて少なく、営業コストに見合わない可能性があります。特に都市部以外の店舗では、深夜帯の売上が極めて低い場合もあり、利益の減少を招くリスクが高まります。また、深夜の少ない客数に対して光熱費や人件費をかけることで、全体的な収益率が低下するケースも見られます。このような状況では、深夜営業を維持することがかえって店舗運営にとってマイナスになる可能性があります。
地域社会への影響
24時間営業は、周辺住民に対して騒音や光害などの迷惑をかける可能性があります。特に、住宅地に近い店舗では、車の出入りや深夜の作業音が近隣住民の生活環境を悪化させる要因となります。また、24時間営業が地域全体に与える影響について十分に配慮しない場合、住民とのトラブルや店舗イメージの低下を引き起こすこともあります。このような地域社会との摩擦は、店舗の長期的な運営においてマイナス要因となるため、慎重な対応が求められます。
従業員の確保困難
深夜勤務を含む24時間体制の勤務シフトでは、従業員を確保することが難しくなる場合があります。特に深夜勤務を希望する人材は限られており、採用のハードルが高くなる可能性があります。また、確保できたとしても、健康問題やワークライフバランスの悪化が原因で離職率が高まるリスクが伴います。この結果、人手不足に陥ることで、店舗運営全体に支障をきたす恐れがあります。
競合との過度な競争
24時間営業が業界全体で標準化すると、他店との差別化が難しくなり、価格競争など過度な競争が発生するリスクがあります。また、すべての店舗が24時間営業を導入すると、顧客の分散が起き、各店舗の利益率が低下する可能性があります。このような競争環境では、店舗独自の戦略を打ち出すことが求められるものの、差別化が困難になる場合があります。
食品ロスの増加
24時間営業では、需要予測が難しくなり、売れ残りによる食品ロスが増加する可能性があります。特に深夜帯は需要が安定しないため、販売計画が不確定要素に左右されやすくなります。また、廃棄ロスが増えることで、コストがかさむだけでなく、環境負荷の増大や企業イメージの悪化にもつながるリスクがあります。このため、食品ロスを抑えるための新たな対策が求められます。

